「役員報酬は売上の何パーセントにすればいいのか」と迷っていませんか。一般的な目安は売上の3〜10%ですが、実はこの割合だけで決めるのは危険です。この記事では、売上に対する目安・国税庁データによる相場・失敗しない決め方を、図解と表でわかりやすく解説します。
結論からお伝えすると、役員報酬は「売上の何%」ではなく「利益(会社に残るお金)」を基準に決めるのが正解です。売上比はあくまで最初の目安として使い、そこから利益と税負担を見て調整していきましょう。

木村 優太CFOne会計事務所 所長税理士
累計300社以上の申告を手がけ、freee導入実績全国1位の会計事務所で「freee Master of the Year」を受賞した現役の税理士・会計事務所の所長が、本記事の内容を監修しています。
監修者の詳細を見る役員報酬は売上の何パーセントが目安?
ここでは、役員報酬が売上の何パーセントが目安になるのかを解説します。まずは一般的な相場感をつかみ、そのうえで「なぜ売上比だけで決めてはいけないのか」まで確認していきましょう。
一般的な目安は売上の3〜10%
中小企業の役員報酬は、売上高の3〜10%程度が一つの目安とされています。たとえば年間売上が3,000万円の会社なら、90万円〜300万円(年額)あたりが最初の検討レンジになります。
ただし、この3〜10%はあくまで幅の広い「相場感」にすぎません。同じ売上でも、経費が少なく利益が多く残る会社と、経費がかさんで利益が薄い会社とでは、支払える役員報酬はまったく変わります。割合はスタート地点として使い、次のステップで利益をもとに調整するのが基本です。
売上規模別の役員報酬の目安(早見表)
売上に対する役員報酬の割合は、売上規模が小さいほど高く、大きくなるほど低くなる傾向があります。売上が小さいうちは経営者の生活費を確保する必要があり、規模が大きくなると事業への再投資や内部留保に回す割合が増えるためです。

| 年間の売上規模 | 役員報酬の目安(売上高比) |
|---|---|
| 1,000万円未満 | 10〜30% |
| 1,000万〜3,000万円 | 8〜20% |
| 3,000万〜5,000万円 | 5〜15% |
| 5,000万〜1億円 | 3〜10% |
| 1億円以上 | 1〜5% |
上の表はあくまで参考値です。利益率の高い業種(士業・IT・コンサルなど)では割合を高めに、原価や外注費が大きい業種では低めに設定するなど、自社の状況に合わせて調整します。
「売上の◯%」だけで決めてはいけない理由
役員報酬を売上比だけで決めるのが危険なのは、売上が同じでも、会社に残るお金(利益)は会社ごとにまったく違うからです。役員報酬の原資になるのは売上そのものではなく、売上から経費を引いたあとの利益です。
たとえば売上5,000万円でも、利益率10%の会社は利益500万円、利益率30%の会社は利益1,500万円です。前者と後者で同じ「売上の10%=500万円」を役員報酬にすると、前者は会社にお金がほとんど残りません。だからこそ、割合は入口にとどめ、実際は利益をもとに判断する必要があります。
【国税庁データ】役員報酬の平均額の実態
ここでは、役員報酬が実際にどのくらい支払われているのかを、国税庁の公的統計をもとに確認します。売上比の目安とあわせて、金額の相場感をつかむ材料にしてください。
資本金階級別の役員の平均給与(令和6年分)
国税庁の「民間給与実態統計調査(令和6年分)」によると、役員の平均給与は会社の資本金規模によって大きく異なります。1年を通じて勤務した役員の平均給与(男女計)は、次のとおりです。
| 資本金階級 | 役員の平均給与(年・男女計) |
|---|---|
| 2,000万円未満 | 665万円 |
| 2,000万円以上 | 907万円 |
| 5,000万円以上 | 1,197万円 |
| 1億円以上 | 1,425万円 |
| 10億円以上 | 1,666万円 |
| 株式会社の全体平均 | 823万円 |
数値は国税庁の「民間給与実態統計調査(令和6年分)」の企業規模別の集計(第7表)にもとづくものです。あくまで平均値であり、適正額は会社ごとに異なる点にご注意ください。
小規模法人の役員報酬の実態は約665万円
中小企業の多くが該当する資本金2,000万円未満の会社では、役員の平均給与は665万円(月あたり約55万円)でした。設立して間もない会社や一人社長の会社では、これより低い水準からスタートするケースも多く見られます。
平均額は「他社がいくら払っているか」の参考にはなりますが、そのまま自社に当てはめられるものではありません。大切なのは、平均ではなく自社の利益から無理なく払える金額を見つけることです。この後の決め方で具体的に見ていきましょう。
なお、役員報酬を適正に決めるには、日々の記帳を整えて自社の利益を正確に把握しておくことが前提になります。記帳や仕訳に時間を取られている方は、AI自動仕訳に対応した会計アプリ「シフォン(CFOne)」を使うと、入力の手間を減らしながら利益の状況を把握しやすくなります。
売上の何パーセントより大切な役員報酬の決め方
ここでは、役員報酬を売上の割合だけに頼らず、無理なく決めるための3ステップを解説します。順番に確認すれば、自社に合った金額を落ち着いて判断できます。

Step1 会社の利益(営業利益)を把握する
最初のステップは、年間の売上と経費から会社の利益の見込みを立てることです。役員報酬を差し引く前の利益がいくらになりそうかを把握しておくと、支払える上限が見えてきます。
下の図のように、売上から経費を引いた利益は「役員報酬(個人に回すお金)」と「法人に残す利益」に分かれます。役員報酬をいくらにするかは、このお金をどう配分するかを決めることだと考えるとわかりやすくなります。

Step2 法人と個人の税負担のバランスを考える
2つ目のステップは、法人と個人の税負担のバランスを見ることです。役員報酬は会社の経費(損金)になるため、役員報酬を増やすと会社の利益が減り、法人税は軽くなります。一方で、受け取る個人の側では所得税・住民税・社会保険料が増えます。

つまり、役員報酬を高くしても低くしても、どこかで税や社会保険料の負担が発生します。ポイントは、法人税と「個人の所得税+社会保険料」の合計がもっとも小さくなる金額を探すことです。
参考として、法人税と所得税の税率は次のようになっています。法人税は中小法人の場合、所得のうち年800万円以下の部分が15%、800万円超の部分が23.2%です(国税庁「法人税の税率」)。一方、個人の所得税は5%から45%までの累進課税で、所得が高くなるほど税率が上がります(国税庁「所得税の税率」)。
| 税金 | 税率の目安 |
|---|---|
| 法人税(中小法人) | 年800万円以下の部分15%/800万円超の部分23.2% |
| 所得税(個人) | 5%〜45%の累進課税(7段階) |
| 社会保険料 | 労使合わせて役員報酬の約30%が目安 |
役員報酬を上げすぎると個人の所得税・社会保険料が重くなり、低くしすぎると会社に利益が残って法人税がかさみます。両者のバランスを取る金額を見つけることが、手取りを大きくするうえで重要です。
法人税と個人の税負担のバランスは、利益額や家族構成によっても変わるため、自力で最適解を出すのは簡単ではありません。判断に迷う方は、税理士監修の会計アプリ「シフォン(CFOne)」でオンライン相談を活用しながら決めるのも一つの方法です。
Step3 1年間払い続けられる金額に設定する
最後のステップは、決めた金額を1年間、毎月同額で払い続けられるかを確認することです。後述するように、役員報酬は原則として期の途中で自由に変更できません。売上が落ちた月でも払い続けられる、無理のない金額に設定しましょう。
迷ったときは、「これ以上下げると生活が苦しい」という最低ラインと、「これ以上上げると会社の資金繰りが厳しい」という上限の間で、資金繰りに余裕を持たせた金額を選ぶのが安全です。
役員報酬を決める際の税務上の注意点
ここでは、役員報酬を売上や利益から決めるときに押さえておきたい税務上の注意点を解説します。ルールを外すと、せっかくの役員報酬が会社の経費(損金)として認められなくなる場合があります。
定期同額給与のルールと3か月以内の改定期限
役員報酬を会社の経費(損金)にするには、原則として定期同額給与(毎月同じ時期に同額を支給する役員報酬)にする必要があります。金額を変更できるのは、事業年度が始まった日から3か月以内が原則です。
定期同額給与のほかにも、事前に届け出て支給する「事前確定届出給与」などの方法があります。詳しい要件は、国税庁の「役員に対する給与」で確認できます。
不相当に高額な役員報酬は損金否認のリスク
役員報酬は、金額のルールを守っていても「不相当に高額」と判断された部分は損金として認められないことがあります。会社の業務内容や利益水準、同業他社の水準などに照らして、明らかに高すぎる報酬は否認の対象になり得ます。
売上の割合だけを見て「利益が薄いのに高額な役員報酬を設定する」といったケースは、税務上の観点でも注意が必要です。利益の裏付けがある、説明できる金額にしておくことが大切です。
社会保険料への影響も確認しておく
役員報酬の金額は、社会保険料(健康保険・厚生年金保険)にも直結します。厚生年金保険の保険料率は18.3%で、会社と個人が半分ずつ負担します。健康保険とあわせると、労使合計で役員報酬の約30%程度が社会保険料の目安です。
役員報酬を高く設定すると社会保険料の負担も大きくなります。保険料率の詳細は、日本年金機構の保険料額表で確認できます。役員報酬は税金だけでなく、社会保険料も含めた「手取り」で考えることが大切です。
役員報酬の変更や社会保険の手続き、法人の申告まわりに不安がある方は、税理士監修で会計事務所が開発した「シフォン(CFOne)」のように、専門家に相談しながら会計を回せるサービスを検討してみてください。
役員報酬の会計・申告を正しく回す方法
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役員報酬と売上の割合に関するよくある質問
ここでは、役員報酬と売上の割合についてよくある質問をまとめました。判断に迷ったときの参考にしてください。
- 役員報酬は売上の何パーセントが正解ですか?
- 一般的な目安は売上の3〜10%ですが、正解は会社ごとに異なります。売上ではなく、経費を引いたあとの利益から無理なく払える金額を基準に決めるのが基本です。
- 役員報酬は利益の何パーセントが目安ですか?
- 明確なルールはありませんが、利益の一定割合を目安にする考え方があります。法人に利益を残しすぎず、個人に回しすぎないバランスを取ることが大切です。
- 創業したばかりの会社は役員報酬をどう決めますか?
- 初年度は売上が読みにくいため、生活に必要な最低限の金額から始め、実績を見て翌期に見直す方法が一般的です。無理のない金額から設定しましょう。
- 売上が伸びたら年度の途中で役員報酬を増やせますか?
- 原則として、期の途中での増額はできません。増額した部分が損金として認められない場合があります。変更は事業年度開始から3か月以内が原則です。
- 役員報酬は社会保険料に影響しますか?
- 影響します。役員報酬が高いほど健康保険・厚生年金の保険料も高くなります。労使合計で報酬の約30%程度が目安のため、手取りで考えることが大切です。
まとめ
役員報酬は売上の3〜10%が一般的な目安ですが、この割合はあくまで出発点です。実際には、売上から経費を引いた利益をもとに、法人税と個人の所得税・社会保険料のバランスを見て決めることが大切です。国税庁の統計では、資本金2,000万円未満の会社の役員の平均給与は665万円(令和6年分)でした。
金額を決めたら、株主総会で決議し、事業年度の開始から3か月以内に設定・改定します。役員報酬は税金と社会保険料を含めた「手取り」で考え、1年間払い続けられる無理のない金額にすることが、失敗しないためのポイントです。
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無料で相談する本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・会計上の判断を保証するものではありません。役員報酬の目安(売上比・割合)は参考値であり、適正額は会社ごとに異なります。制度・税率・保険料率・期限等は改正される場合があります。実際のお手続きや判断にあたっては、最新の情報を国税庁等の公式サイトでご確認のうえ、必要に応じて税理士や所轄の税務署にご相談ください。

