役員報酬の手取りシミュレーション|計算方法と早見表

役員報酬の手取りシミュレーション|計算方法と早見表

役員報酬を月いくらに設定すると、実際に手元へ残る「手取り」はいくらになるのか——結論から言うと、役員報酬の手取りは額面のおおよそ7〜8割が目安です。残りは社会保険料・所得税・住民税として差し引かれます。

この記事では、役員報酬の手取りが決まる仕組みと、月額別の手取り早見表、自分で計算する手順を、国税庁などの一次情報をもとに分かりやすく解説します。報酬額が上がるほど手取り率は下がっていく点も、あわせて確認していきましょう。

この記事の監修者
税理士 木村優太(CFOne会計事務所 所長税理士)

木村 優太CFOne会計事務所 所長税理士

累計300社以上の申告を手がけ、freee導入実績全国1位の会計事務所で「freee Master of the Year」を受賞した現役の税理士・会計事務所の所長が、本記事の内容を監修しています。

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役員報酬の手取りとは|額面から差し引かれるお金

役員報酬の手取りとは、会社から支給される報酬(額面)から社会保険料・所得税・住民税を差し引いた、実際に受け取れる金額のことです。ここでは、額面から何が引かれて手取りになるのかを整理します。

役員報酬の手取りは額面から社会保険料・所得税・住民税を差し引いた残り

役員報酬は、給与と同じように給与所得(勤務先から受け取る給料などの所得)として扱われます。そのため、差し引かれるお金は次の3種類です。

  • 社会保険料(健康保険・厚生年金・40歳以上は介護保険)の本人負担分
  • 所得税(復興特別所得税を含む)
  • 住民税

社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険)

社会保険料は、健康保険料と厚生年金保険料を合計したものです。40歳から64歳までの人は、これに介護保険料が加わります。役員報酬から引かれるのは、このうちの本人負担分(労使折半のため保険料の半分)です。

厚生年金保険料率は全国一律で18.3%(本人負担は半分の9.15%)です。健康保険料率は加入する保険者や都道府県で異なり、協会けんぽ東京支部の場合は令和8年度で9.85%(本人負担4.925%)となっています。報酬が高いほど社会保険料も増えますが、後述する上限(標準報酬月額の上限)を超えると頭打ちになります。

所得税・住民税

所得税は、額面から給与所得控除や社会保険料控除・基礎控除などを差し引いた課税所得(税金の計算のもとになる所得)に、5%〜45%の累進税率をかけて計算します。報酬が高いほど税率も上がる仕組みです。

住民税は、前年の所得をもとに計算され、税率は所得に応じた部分(所得割)が一律おおむね10%です。額面が同じでも、年齢・お住まいの自治体・扶養家族の有無によって手取りは変わります。ここが役員報酬シミュレーションで押さえておきたいポイントです。

役員報酬の手取り早見表|月額別シミュレーション

ここでは、役員報酬の月額別に手取りの目安をまとめた早見表を紹介します。まずは前提条件をご確認ください。実際の金額は個々の状況で変わるため、あくまで概算としてご覧ください。

シミュレーションの前提条件

東京都(協会けんぽ)・40歳未満(介護保険なし)・扶養家族なし・賞与なし・毎月同額支給・令和7年分の税制と令和8年度の社会保険料率をもとにした概算です。社会保険料は月額報酬を標準報酬月額とみなして計算しています。住民税は所得割10%・均等割を含めた概算です。

役員報酬 月額別の年間手取りの内訳と手取り率(概算)
月額(額面)年収社会保険料
(本人・年)
所得税
(年)
住民税
(年)
年間手取り手取り率
30万円360万円約51万円約7万円約16万円約287万円約80%
50万円600万円約85万円約19万円約31万円約465万円約78%
80万円960万円約119万円約76万円約61万円約704万円約73%
100万円1,200万円約131万円約127万円約84万円約859万円約72%

表のとおり、役員報酬が高くなるほど手取り率は下がっていきます。これは、所得税が累進課税(所得が増えるほど税率が上がる仕組み)だからです。月30万円では手取り率が約80%なのに対し、月100万円では約72%まで下がります。

健康保険料率・介護保険料率は都道府県や年度によって改定されます。最新の料率は、全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和8年度の都道府県毎の保険料率」や、日本年金機構「厚生年金保険の保険料」でご確認ください。

40歳以上の手取り

40歳から64歳までは介護保険料(協会けんぽで令和8年度1.62%・本人負担0.81%)が加わるため、上表より手取りは年数万円ほど少なくなる点にご注意ください。

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役員報酬の手取りを計算する4ステップ

役員報酬の手取りは、次の4ステップで計算できます。自分でシミュレーションするときの流れとして参考にしてください。使う数値はいずれも国税庁などの一次情報にもとづくものです。

Step1:社会保険料(本人負担)を計算する

まず、月額報酬に近い標準報酬月額(社会保険料の計算に使う区分ごとの金額)に、保険料率をかけて社会保険料を求めます。厚生年金は18.3%、健康保険は協会けんぽ東京で9.85%(令和8年度)、40歳以上はさらに介護保険1.62%が加わります。いずれも労使折半のため、本人負担はその半分です。年額はこれを12倍します。

Step2:所得税を計算する

年収から給与所得控除を引いて給与所得を求め、そこから社会保険料控除・基礎控除などを差し引いて課税所得を計算します。給与所得控除の下限は令和7年分から65万円に引き上げられました(国税庁「No.1410 給与所得控除」)。

基礎控除も令和7年分から見直され、合計所得金額に応じて58万円〜95万円が適用されます(国税庁「No.1199 基礎控除」)。課税所得が求まったら、5%〜45%の速算表で所得税額を計算し、これに復興特別所得税(2.1%)を加算します(国税庁「No.2260 所得税の税率」)。

Step3:住民税を計算する

住民税は、所得に応じた所得割(おおむね10%)と、定額の均等割を合計して求めます。住民税は前年の所得をもとに計算されるため、報酬が上がった翌年に住民税の負担が増える点に注意が必要です。1年目と2年目以降で手取りの体感が変わることがあります。

Step4:手取りを算出する

最後に、額面から社会保険料・所得税・住民税を差し引けば手取りが求まります。手取り=額面−社会保険料−所得税−住民税、というシンプルな式です。とはいえ、標準報酬月額の区分や各種控除の判定が絡むため、正確な計算には手間がかかります。毎月の給与計算や記帳の負担を減らしたい方は、シフォン(CFOne)のようにAI自動仕訳に対応した会計アプリを使うと、役員報酬まわりの処理をまとめてラクにできます。

見落としがちな「会社負担の社会保険料」

役員報酬の手取りを考えるとき、個人の負担だけでなく会社側の負担も見落とせません。ここでは、役員報酬シミュレーションで見落としがちな「会社負担の社会保険料」について解説します。

社会保険料は労使折半、つまり本人と同額を会社も負担しています。たとえば本人の社会保険料が月7万円なら、会社もほぼ同額の約7万円を負担しているということです。役員報酬を月50万円に設定した場合、会社が実際に負担しているのは「報酬50万円+会社負担の社会保険料」に相当します。

総人件費で考える

一人社長や小規模法人では、会社と個人の財布が近いため、会社負担分も含めた「総人件費」で報酬額を考えることが大切です。

会社負担の社会保険料は会社の経費(損金)になりますが、資金繰りには実際に効いてきます。個人の手取りと会社のコストは表裏一体である点を押さえておきましょう。役員報酬・社会保険料の会社負担を毎月正確に管理したい方は、AI自動仕訳に対応した会計アプリ「シフォン(CFOne)」を使うと、給与計算から記帳までの流れを効率化できます。

手取りだけで決めない|法人税とのバランス

役員報酬は、個人の手取りだけで決めるものではありません。役員報酬の額は法人税にも影響するため、会社と個人を合わせた「手残り」で考えるのが基本です。ここでは、そのバランスの考え方を解説します。

役員報酬は会社の経費(損金)になるため、報酬を上げると会社の利益が減り、法人税は軽くなります。一方で、個人の所得税・住民税・社会保険料は増えます。逆に報酬を下げると、個人の負担は減りますが会社に利益が残り、法人税が増えます。役員報酬を上げても下げても、どこかで税負担が発生するという関係です。

ポイントは税率差です。法人税は、資本金1億円以下の中小法人であれば年800万円以下の所得部分が15%、それを超える部分が23.2%です(国税庁「No.5759 法人税の税率」)。個人の所得税は5%〜45%の累進です。法人と個人のどちらで利益を受け取るほうが税率が低いかを比べ、会社と個人の合計の手残りが大きくなる配分を探すのが役員報酬シミュレーションの本質です。

役員報酬の適正額の考え方は、役員報酬は売上の何パーセントかを解説した記事や、役員報酬の最低額について解説した記事もあわせてご覧ください。

報酬額は「定期同額給与」のルールに注意

役員報酬は自由に増減できるわけではありません。会社の経費として認められる(損金算入される)役員報酬は、原則として定期同額給与(毎月同額で支給する役員報酬)である必要があります。改定できるのは、原則として事業年度開始から3か月以内などに限られます(国税庁「No.5211 役員に対する給与」)。

期中の安易な変更に注意

ルールを外れて期の途中で報酬を増額すると、増額分などが損金として認められない場合があります。設定の前に、税理士や所轄の税務署にご確認ください。

このように、役員報酬は税務のルールを踏まえて年1回の決定が実質的に重要になります。一度決めると1年間は変えにくいため、手取り・法人税・社会保険料を総合的にシミュレーションしてから決めることが大切です。判断に迷うときは、税理士監修のAI会計アプリ「シフォン(CFOne)」のように、専門家に相談できるサービスを活用すると安心です。

役員報酬の記帳・申告を正しく処理するには

役員報酬は、決めて終わりではありません。毎月の記帳・源泉徴収・年末調整、そして決算・申告まで、正しく処理する必要があります。ここでは、その負担を減らす方法を紹介します。

役員報酬まわりの処理は、給与計算・社会保険料の納付・源泉所得税の納付・記帳と、毎月こまごまとした作業が続きます。従業員10名以下の小規模法人では、これらを社長自身や少人数で回していることも多く、本業の合間の経理負担が重くなりがちです。

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「税理士に頼むと高い」「でも自力の経理は不安」という従業員10名以下の法人や個人事業主の方は、年10万円で使える税理士監修の会計アプリ「シフォン(CFOne)」も選択肢になります。マイクロ法人での社会保険料の考え方はマイクロ法人の社会保険料を解説した記事で、会社員がマイクロ法人を持つ場合の注意点はマイクロ法人はサラリーマンも作れるのかを解説した記事で詳しく紹介しています。

役員報酬の手取りに関するよくある質問

役員報酬の手取りシミュレーションに関して、よく寄せられる質問をまとめました。あわせて確認しておきましょう。

役員報酬をゼロにすることはできますか?
設定自体は可能です。ただし社会保険に加入できない、生活費を役員貸付で処理する必要が生じるなどの影響があります。個別の判断は税理士にご確認ください。
役員報酬が月5万円や8万円だと社会保険料はいくらですか?
標準報酬月額の下限区分で計算され、健康保険・厚生年金あわせて月1万円台〜となる場合があります。低額設定は将来の年金額にも影響します。
個人事業主と法人役員では手取りが多いのはどちらですか?
所得水準によって異なります。一般に利益が大きくなるほど法人のほうが有利になりやすい傾向がありますが、社会保険料や事務負担も含めた総合判断が必要です。
役員報酬は年度の途中で変更できますか?
損金にするには原則として事業年度開始から3か月以内などの改定に限られます。期中の安易な増額は損金不算入となる場合があるため注意が必要です。
40歳になると手取りはどう変わりますか?
40歳から64歳までは介護保険料が加わるため、社会保険料が増え、その分だけ手取りは少なくなります。

まとめ

役員報酬の手取りは、額面から社会保険料・所得税・住民税を差し引いた金額で、目安は額面の約7〜8割です。報酬が高くなるほど所得税の累進課税で手取り率は下がっていきます。早見表を目安にしつつ、年齢・自治体・扶養の有無で金額が変わる点を押さえておきましょう。

また、役員報酬は個人の手取りだけでなく、会社負担の社会保険料や法人税とのバランス、そして定期同額給与のルールも踏まえて決めることが大切です。会社と個人を合わせた手残りが大きくなる配分を、シミュレーションで探すのがポイントです。判断に迷うときは、専門家に相談すると安心です。

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本記事のご注意

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・会計上の判断を保証するものではありません。早見表の金額は前提条件にもとづく概算です。制度・税率・控除額・保険料率・期限等は改正される場合があります。実際のお手続きや判断にあたっては、最新の情報を国税庁等の公式サイトでご確認のうえ、必要に応じて税理士や所轄の税務署にご相談ください。