マイクロ法人を作ると社会保険料が安くなると聞いたけれど、実際にどのくらい違うのか気になっていませんか。この記事では、個人事業主の国民健康保険・国民年金と、マイクロ法人化した場合の健康保険・厚生年金を、最新の公的データにもとづいて比較し、その仕組みと注意点をわかりやすく解説します。
結論からお伝えすると、個人事業の所得が一定水準を超えると、マイクロ法人を作り役員報酬を最低ラインに抑えたほうが社会保険料の負担は軽くなるケースが多くあります。ただし将来の年金額など見落としがちなデメリットもあるため、図解と試算表で仕組みから確認していきましょう。

木村 優太CFOne会計事務所 所長税理士
累計300社以上の申告を手がけ、freee導入実績全国1位の会計事務所で「freee Master of the Year」を受賞した現役の税理士・会計事務所の所長が、本記事の内容を監修しています。
監修者の詳細を見るマイクロ法人の社会保険料が個人事業主より安くなる仕組み
ここでは、なぜマイクロ法人にすると社会保険料の負担が変わるのか、その根本的な仕組みを解説します。
個人事業主は「国民健康保険+国民年金」に加入する
会社員でも他の被用者保険にも加入していない個人事業主は、市区町村が運営する国民健康保険(国保)と、日本年金機構が運営する国民年金に加入します。どちらも全額が自己負担で、扶養という考え方がなく、家族の人数分の保険料がそれぞれ発生する点が特徴です。
国民健康保険料は、前年の所得に応じて金額が変わります。事業が順調に伸びて所得が増えるほど、保険料の負担も比例して重くなっていく仕組みです。
マイクロ法人化で「健康保険+厚生年金」に切り替わる
マイクロ法人(社会保険や税金面のメリットを目的に、あえて小規模なまま運営する一人法人)を設立し、自分を役員として役員報酬を受け取ると、加入する制度が健康保険(協会けんぽ等)と厚生年金に切り替わります。
これらの保険料は、事業全体の利益ではなく役員報酬の金額(標準報酬月額)だけで決まります。つまり、法人自体でどれだけ利益が出ていても、役員報酬を低く設定すれば、社会保険料はその低い金額を基準に計算されるということです。この違いが、個人事業主とマイクロ法人で社会保険料に差が生まれる最大の理由です。

個人事業主(国保+国民年金)の社会保険料はいくら?
ここでは、法人化しない場合の個人事業主が実際にいくら社会保険料を負担しているのかを確認します。
国民年金保険料は定額(令和8年度は月17,920円)
国民年金保険料は、所得の金額にかかわらず全員が同じ金額を負担する定額制です。令和8年度(令和8年4月〜令和9年3月)の国民年金保険料は月額17,920円で、日本年金機構「国民年金保険料の額は、どのようにして決まるのか?」で確認できます。夫婦2人とも国民年金であれば、この金額が2人分必要です。
国民健康保険料は所得割・均等割などの合計で決まる
国民健康保険料は、厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」によると、具体的な算定方法は各市区町村の条例で定められており、所得に応じて増える「所得割」と、加入者の人数に応じてかかる「均等割」などを世帯単位で合計して計算します。保険料率は市区町村ごとに異なるため、同じ所得でも住んでいる自治体によって金額が変わる点に注意が必要です。
目安として、東京都江戸川区の令和8年度の保険料率(単身・40歳未満のケース)は次のとおりです。
| 区分 | 所得割率 | 均等割額(年額) |
|---|---|---|
| 医療分 | 7.83% | 48,900円 |
| 後期高齢者支援金分 | 2.84% | 17,400円 |
| 子ども・子育て支援金分 | 0.27% | 1,870円(18歳以上) |
国民健康保険料には賦課限度額(上限)がある
国民健康保険料には「賦課限度額」と呼ばれる上限額が設けられており、所得がどれだけ高くても、この金額を超えて負担することはありません。江戸川区の例では、令和8年度の年間限度額は40〜64歳で113万円(0〜39歳・65〜74歳は96万円)です。ただし、この上限に到達するのはかなりの高所得の場合に限られ、一般的な事業所得の水準では所得の増加にあわせて保険料も増え続けます。
毎年増えていく国民健康保険料の負担に悩んでいる個人事業主の方は、記帳や申告の手間を減らしながら経営全体を見直せる、税理士監修の会計アプリ「シフォン(CFOne)」を検討してみるのも一つの方法です。
マイクロ法人(健康保険+厚生年金)の社会保険料はいくら?
次に、マイクロ法人を設立し役員報酬を最低ラインに設定した場合の社会保険料を確認します。
社会保険に加入できる実質的な最低ラインは標準報酬月額88,000円
役員報酬に法律上の最低額はなく、0円に設定することも可能です。ただし、日本年金機構の厚生年金保険料額表では、厚生年金の等級は標準報酬月額88,000円が最も低い区分として設定されています。健康保険と厚生年金の両方に加入できる実質的な最低ラインは、役員報酬を月額88,000円程度に設定した場合です。役員報酬0円にした場合の詳しいメリット・デメリットは、関連記事「役員報酬の最低額はいくら?0円にできるか解説」でも解説しています。
厚生年金保険料(本人負担)は月8,052円
日本年金機構「厚生年金保険料額表」によると、標準報酬月額88,000円(1等級)の場合、令和8年度の保険料率18.3%を労使折半した本人負担分は月8,052円です。厚生年金保険料は会社と折半のため、法人が半分を負担してくれる点も個人事業主の国民年金にはないメリットです。
健康保険料(協会けんぽ・本人負担)は月4,334円ほど
全国健康保険協会(協会けんぽ)東京支部の令和8年度の健康保険料率9.85%(40歳未満・介護保険料なし)をもとに計算すると、標準報酬月額88,000円の健康保険料(本人負担)は月4,334円ほどになります。厚生年金と合わせた社会保険料の本人負担は、月12,386円ほどです。40〜64歳の方は、これに介護保険料が別途上乗せされます。
【比較】個人事業主とマイクロ法人の社会保険料シミュレーション
ここまでの数値を使って、個人事業主のままの場合とマイクロ法人化した場合の社会保険料を、具体的な所得水準で比較してみましょう。
所得400万円のケースで比較する
単身・40歳未満・事業所得400万円(前述の江戸川区の料率で試算)の場合、個人事業主のままとマイクロ法人化した場合の社会保険料は次のとおりです。
| ケース | 内訳 | 月あたりの目安 | 年間の目安 |
|---|---|---|---|
| 個人事業主のまま | 国民健康保険38,227円+国民年金17,920円 | 56,147円 | 673,768円 |
| マイクロ法人化(役員報酬88,000円) | 健康保険4,334円+厚生年金8,052円 | 12,386円 | 148,632円 |
このケースでは、年間で約52.5万円の差が生まれる計算です。事業所得が400万円あるなら、法人の維持コストを考慮しても法人化による社会保険料の削減効果は小さくありません。

所得が高いほど法人化の効果は大きくなる
グラフのとおり、国民健康保険料は所得に比例して増え続ける一方、役員報酬を最低ラインに固定すれば社会保険料はほぼ変わりません。そのため、事業所得が200万円程度の場合は差額が月あたり2.5万円ほどですが、所得800万円では月8万円以上の差になります。所得が伸びている個人事業主ほど、マイクロ法人化を検討する価値が大きくなる仕組みだといえます。
ただし、これはあくまで社会保険料だけを比較した試算です。法人の設立費用や維持コスト、税務処理の手間も含めたトータルで判断することが大切です。複雑になりがちな法人の経理・申告は、AI自動仕訳とオンライン相談無制限の「シフォン(CFOne)」を使うと、簿記の知識が浅くても進めやすくなります。
個人事業とマイクロ法人を両立させる「二刀流」の仕組み
マイクロ法人による社会保険料の最適化は、個人事業をやめて完全に法人へ切り替えるものではなく、両方を並行して運営する「二刀流」が典型的なスキームです。
事業はそのまま、役員報酬だけを最低ラインにする
本業の売上や利益の大部分は、引き続き個人事業(事業所得)として計上します。そのうえで別途マイクロ法人を設立し、その法人から自分自身に、社会保険に加入できる最低ラインの役員報酬(標準報酬月額88,000円など)を支払う形にします。社会保険の加入根拠は「マイクロ法人からの役員報酬」だけになるため、個人事業の所得がどれだけ大きくても、社会保険料は役員報酬の金額を基準に計算されます。

サラリーマンの副業パターンとは仕組みが異なる
すでに会社員として勤務先の社会保険に加入している人が、副業でマイクロ法人を設立するケースは、この記事で想定している「個人事業主がマイクロ法人を作る」ケースとは仕組みが異なります。会社員がマイクロ法人を作ると、勤務先の給与と役員報酬を合算して保険料が計算される「二以上事業所勤務」の扱いになり、社会保険料はむしろ増えるケースがほとんどです。サラリーマンがマイクロ法人を作る場合の詳しい仕組みは、関連記事「マイクロ法人はサラリーマンも作れる?メリットと注意点」で解説しています。
個人事業と法人の2つの帳簿を並行して管理するのは手間がかかるため、記帳や仕訳をAIが自動化してくれる会計アプリ「シフォン(CFOne)」を使うと、二刀流の経理も進めやすくなります。
社会保険料を下げることのデメリット
社会保険料の負担を軽くできる一方で、見落とされがちなデメリットもあります。あわせて確認しておきましょう。
将来の厚生年金の受給額が少なくなる
厚生年金は、納めた保険料の金額に応じて将来受け取る年金額が決まる仕組みです。役員報酬を最低ラインに抑えると、その分だけ将来の厚生年金の受給額も少なくなります。目先の保険料負担だけでなく、老後の年金額まで含めて判断することが大切です。
傷病手当金など給付の算定基礎が下がる
健康保険の傷病手当金(病気やケガで働けない間の所得補償)や出産手当金は、標準報酬月額をもとに支給額が計算されます。役員報酬を低く抑えていると、いざという時にこれらの給付額も少なくなる点は理解しておく必要があります。役員報酬をどこまで下げるべきかの判断基準は、関連記事「役員報酬の最低額はいくら?0円にできるか解説」でさらに詳しく解説しています。
マイクロ法人の設立・運営にかかるその他のコスト
法人住民税の均等割など毎年発生する費用
社会保険料が軽くなる一方で、法人には設立時の登記費用や、赤字であっても毎年発生する法人住民税の均等割など、個人事業主にはないコストがかかります。社会保険料の削減効果が、これらの法人維持コストを上回るかどうかを事前に試算しておくことが重要です。設立費用や維持コストの具体的な内訳は、関連記事「マイクロ法人はサラリーマンも作れる?メリットと注意点」の設立費用の章でも紹介しています。
マイクロ法人の経理は、記帳・申告のやり方に不安がある方は税理士への相談も選択肢になりますが、日々の記帳はAI自動仕訳の「シフォン(CFOne)」で効率化しながら、必要な時だけオンラインで専門家に相談する使い方もおすすめです。マイクロ法人の設立手続きや必要書類については、起業・開業カテゴリの記事もあわせてご覧ください。
マイクロ法人で社会保険料を最適化する際の注意点
定期同額給与のルールを守る
役員報酬は、国税庁の「役員給与」(定期同額給与)のルールにより、原則として事業年度開始から3か月以内に決めた金額を、その事業年度中は毎月同額で支払う必要があります。期の途中で自由に金額を変更すると、法人の経費(損金)として認められなくなる場合があるため、役員報酬の金額は事前にしっかりシミュレーションしてから決めることが大切です。社会保険料だけでなく、税負担も含めた役員報酬全体の決め方は、関連記事「役員報酬は売上の何パーセント?相場と決め方」でも解説しています。
個人事業と法人、両方の経理・申告が必要になる
二刀流の場合、個人事業の確定申告と、法人の決算・法人税申告の両方を行う必要があります。役員報酬にかかる給与所得は、国税庁の「給与所得」にあたり、給与所得控除という個人事業の必要経費とは別の控除を受けられる点もメリットの一つです。経理・申告の手間は個人事業だけの場合より確実に増えるため、自力での対応が難しいと感じたら、税理士監修のAI会計アプリ「シフォン(CFOne)」で、個人事業と法人の記帳をどちらもオンライン相談を受けながら進めるのも有効な選択肢です。役員報酬や勘定科目の具体的な処理方法は、経理・記帳カテゴリの記事も参考にしてください。

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無料で相談するマイクロ法人の社会保険料に関するよくある質問
- マイクロ法人にすると社会保険料はどのくらい安くなりますか?
- 事業所得や家族構成によって異なりますが、単身・所得400万円のモデルケースでは年間で約52.5万円ほど軽くなる試算になります。所得が高いほど差は大きくなる傾向があります。
- 社会保険に加入するための役員報酬の最低額はいくらですか?
- 法律上の下限はありませんが、健康保険と厚生年金の両方に加入できる実質的な最低ラインは標準報酬月額88,000円程度です。
- マイクロ法人の社会保険料はなぜ安くなるのですか?
- 社会保険料が事業全体の利益ではなく役員報酬(標準報酬月額)だけで決まるためです。役員報酬を低く設定すれば、法人の利益が大きくても保険料は増えません。
- 個人事業主のままだと社会保険料はどう決まりますか?
- 国民健康保険料は前年の所得に応じて増え、国民年金保険料は所得にかかわらず定額(令和8年度は月17,920円)です。国保の料率は市区町村によって異なります。
- 社会保険料を下げすぎるとどんなデメリットがありますか?
- 将来受け取る厚生年金の額が少なくなるほか、傷病手当金など健康保険の給付額も標準報酬月額を基準に計算されるため下がります。目先の負担軽減だけで判断しないことが大切です。
まとめ
個人事業主の国民健康保険料は所得に応じて増え続けるのに対し、マイクロ法人を設立し役員報酬を最低ライン(標準報酬月額88,000円ほど)に抑えれば、社会保険料は所得にかかわらずほぼ一定に保てます。単身・所得400万円のモデルケースでは年間約52.5万円の差になりますが、将来の年金額の減少や法人の維持コストといったデメリットもあわせて検討することが欠かせません。仕組みを正しく理解したうえで、ご自身の事業規模に合った選択を検討しましょう。
マイクロ法人の経理・申告も、シフォン(CFOne)におまかせ
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無料で相談する本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・社会保険上の判断を保証するものではありません。国民健康保険料の料率は市区町村ごとに異なり、社会保険料率・控除額・限度額等も年度によって改定される場合があります。実際のお手続きや判断にあたっては、最新の情報をお住まいの市区町村・日本年金機構・全国健康保険協会等の公式サイトでご確認のうえ、必要に応じて税理士や社会保険労務士、所轄の年金事務所にご相談ください。

