業務委託で開業届は必要?出さないと違法かと書き方を解説

業務委託で開業届は必要?出さないと違法かと書き方を解説

業務委託で働き始めると「開業届は出すべき?」「出さないと違法になるの?」「書き方がわからない」と迷う方は少なくありません。この記事では、業務委託で開業届が必要になる判断基準から、出さない場合の扱い、実際の用紙を使った書き方、源泉徴収・確定申告との関係までを、開業届の画像つきでわかりやすく解説します。

結論として、業務委託で継続的・反復的に収入を得ているなら、開業届の提出が原則必要です。出さなくても罰則はありませんが、青色申告などの節税メリットを受けられなくなります。用紙は国税庁のサイトから無料で入手でき、書き方も難しくありません。順番に見ていきましょう。

この記事の監修者
税理士 木村優太(CFOne会計事務所 所長税理士)

木村 優太CFOne会計事務所 所長税理士

累計300社以上の申告を手がけ、freee導入実績全国1位の会計事務所で「freee Master of the Year」を受賞した現役の税理士・会計事務所の所長が、本記事の内容を監修しています。

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業務委託で開業届は必要?提出義務と判断基準

ここでは、開業届の話に入る前に、業務委託という働き方の基本と、開業届が必要になる判断基準を確認します。

業務委託とは?雇用契約との違い

業務委託とは、企業などから仕事を請け負い、成果物や業務の提供に対して報酬を受け取る働き方です。会社に雇われる「雇用契約」とは異なり、指揮命令を受けずに独立して仕事を行う点が特徴で、税金や社会保険の扱いも変わります。

項目業務委託雇用契約
立場個人事業主など(独立)従業員
受け取るお金報酬・外注費給与
税金自分で確定申告会社が年末調整
社会保険国民健康保険・国民年金会社の社会保険
開業届原則必要不要

このように、業務委託では税金を自分で計算して納める必要があります。その第一歩となるのが開業届の提出です。

継続的な業務委託は開業届の対象になる

開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)は、事業を始めたことを税務署に知らせるための書類です。所得税法では、事業を開始した人は開業日から1か月以内に開業届を提出することとされています。

業務委託で継続的・反復的に仕事を請け負い、事業所得が生じているなら、この対象に当たると考えられます。手続きの詳細は、国税庁の「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」で確認できます。

20万円は開業届の基準ではない

「所得が20万円を超えたら開業届」と混同されがちですが、20万円は確定申告が必要かどうかの目安であり、開業届の提出基準とは別の話です。開業届に金額の基準はありません。

業務委託で開業届を出さないと違法?出さないとどうなる

業務委託を始めた方がもっとも気にするのが「開業届を出さないと違法になるのか」という点です。ここでは罰則の有無と、出さないことで生じる実務上の不利を整理します。

結論から言うと、開業届を提出しなくても、それ自体に罰則は定められていません。期限を過ぎて提出しても受理されるのが一般的です。つまり「開業届を出さない=違法」ではありません。

注意すべきは「申告」

開業届と違い、所得が生じれば確定申告は別途必要です。確定申告をしないと、無申告加算税や延滞税が課される場合があります。「開業届を出していないから申告しなくてよい」という誤解には注意しましょう。

また、開業届を出さないと次のような不利もあります。

  • 青色申告ができない:最大65万円の特別控除を受けられない
  • 屋号付きの口座を開設しにくい:事業用のお金を分けて管理しづらい
  • 事業の実態を示しにくい:補助金申請や融資などで不利になる場合がある

このように、違法ではないものの、開業届を出さないと節税や事業運営の面で損をしやすいのが実情です。業務委託で継続的に収入を得るなら、早めに提出しておくとよいでしょう。

業務委託は事業所得?雑所得?開業届との関係

業務委託の報酬が「事業所得」か「雑所得」かは、開業届を出すべきか、青色申告ができるかに直結します。ここで区分の考え方を押さえておきましょう。

業務委託の報酬が「継続的・反復的に行う事業」といえるなら事業所得にあたり、開業届の対象になります。事業所得として申告すれば、青色申告による特別控除などのメリットも受けられます。

一方、単発・臨時で得た少額の報酬など、事業とまではいえないものは「雑所得」として扱われるのが一般的です。事業所得と雑所得の区分は、帳簿書類の保存の有無なども踏まえて判断されます。所得の区分については国税庁の「事業所得の課税のしくみ」などが参考になります。

区分目安開業届・青色申告
事業所得継続的・反復的に行い、帳簿を付けて事業として営んでいる対象。青色申告が可能
雑所得単発・臨時など、事業とはいえない規模対象外。青色申告は不可

迷う場合は、所轄の税務署や税理士に確認すると安心です。事業として続けていく見込みがあるなら、開業届を出して事業所得として申告するのが基本の流れになります。

業務委託の開業届の書き方【記入例・様式画像付き】

ここでは、開業届の用紙をどこで入手し、業務委託の場合にどこをどう記入すればよいかを、実際の用紙の画像とあわせて解説します。記入する主な欄は限られているので、落ち着いて進めれば問題ありません。

開業届の入手方法(国税庁サイト・税務署の窓口)

開業届の用紙は、下の画像のような1枚のPDFです。主な入手方法は次の3つで、いずれも費用はかかりません。

国税庁の個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)の様式全体
  • 国税庁サイトの「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」ページからPDFをダウンロードして印刷する
  • 最寄りの税務署の窓口で用紙を受け取る
  • e-Tax(国税電子申告・納税システム)を使い、用紙を印刷せず画面上で作成・提出する

PDFのダウンロードや手続きの詳細は、国税庁の「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」のページで確認できます。用紙のPDFはこのページからダウンロードできます。

業務委託で記入する開業届の主なポイント

用紙は難しく見えますが、業務委託で記入する主な欄は限られています。下の画像の①〜⑨が、実際に書き込む主なポイントです。

業務委託で開業届を記入するときの主なポイントを示した記入例
  1. 提出先:納税地(自宅など)を管轄する税務署名を書きます
  2. マイナンバー:本人の個人番号を記入します
  3. 氏名・生年月日:本人の情報を記入します
  4. 職業・屋号:業務委託の仕事内容を書きます。屋号(事業の名前)は任意で、空欄でもかまいません
  5. 届出の区分:新しく事業を始めるので「開業」に「1」と記入します
  6. 所得の種類:業務委託が事業なら「事業(農業)所得」にチェックします
  7. 開業・廃業等日:事業を始めた日を書きます
  8. 青色申告承認申請書の提出の有無:青色申告をするなら「有」にチェックします
  9. 事業の概要:どんな業務委託かをできるだけ具体的に書きます

業務委託で迷いやすい「職業欄・屋号欄」の書き方

業務委託でとくに迷いやすいのが「職業欄」と「屋号欄」です。下の画像で位置を確認しましょう。

業務委託の開業届の職業欄と屋号欄の記入位置を示した拡大図

職業欄には、業務委託で行う実際の仕事内容を書きます。決まった様式はなく、下のように職種がわかる表現でかまいません。屋号欄は事業の名前で、任意のため空欄でも問題ありません。

業務委託の仕事職業欄の記入例
記事の執筆Webライター/文筆業
システム開発システムエンジニア/プログラマー
デザイン制作デザイナー/グラフィックデザイナー
営業・販売の代行営業代行業
配送・運送配送業/運送業

職業欄の書き方は、事業の内容が伝わることが大切です。書き方をさらに詳しく知りたい方は、起業・開業のコラム一覧もあわせてご覧ください。

「届出の区分・所得の種類」の書き方

もう一か所、業務委託で押さえたいのが「届出の区分」と「所得の種類」です。下の画像で位置を確認しておきましょう。

開業届の届出の区分と所得の種類の記入位置を示した拡大図

とくに大切なのが、「届出の区分」で開業に「1」と記入し、「所得の種類」で事業(農業)所得にチェックする2か所です。この2か所が、業務委託を事業所得として申告するための起点になります。

記入は数か所で済みますが、開業後は日々の取引の記帳や確定申告が必要になります。こうした入力の手間に不安がある方は、AI自動仕訳に対応した会計アプリ「シフォン(CFOne)」を使うと、記帳の負担を大きく減らせます。

業務委託の開業届の出し方(提出方法と提出期限)

記入が終わったら、税務署に提出します。ここでは提出方法と提出期限を整理します。本業や日々の稼働で忙しい方は、郵送やe-Taxを選ぶと窓口に行く手間を省けます。

提出方法特徴
税務署の窓口その場で確認してもらえる。控えに受付印をもらえる
郵送納税地を管轄する税務署へ送付。控えと返信用封筒を同封すると受付印つきの控えが返送される
e-Tax(オンライン)自宅から24時間提出できる。印刷や郵送が不要で手間が少ない

提出期限は、事業を開始した日から1か月以内とされています。ただし、期限を過ぎて提出しても受理されるのが一般的で、期限超過による罰則は定められていません。とはいえ、青色申告には別の期限があるため、早めの提出が安心です。

青色申告で特別控除を受けたい場合は、開業届に加えて「青色申告承認申請書」を、その年の3月15日まで(その年に開業した場合は開業日から2か月以内)に提出する必要があります。手続きは国税庁の「所得税の青色申告承認申請手続」で確認できます。開業届と同時に出しておくと二度手間になりません。

業務委託と源泉徴収・確定申告の関係

業務委託では、報酬からあらかじめ所得税が差し引かれている(源泉徴収されている)ことがあります。ここでは源泉徴収と確定申告の関係を整理します。

原稿料やデザイン料など一定の報酬は、支払う側があらかじめ所得税を差し引いて納める「源泉徴収」の対象になることがあります。源泉徴収の対象になる報酬や税額の計算方法は、国税庁の「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」で確認できます。

ポイントは、源泉徴収された税額は、確定申告で精算されるという点です。差し引かれた税金が本来の税額より多ければ、確定申告によって払いすぎた分が還付されることもあります。

業務委託で得た所得は、自分で1年分を集計して確定申告する必要があります。取引先が発行する支払調書や、自分で管理する売上・経費の記録が、そのまま申告の基礎資料になります。確定申告の全体像は確定申告のコラム一覧でも解説しています。

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業務委託で開業届を出すメリット

ここでは、業務委託で開業届を提出する主なメリットを紹介します。節税や事業運営の面で役立つものが多くあります。

  • 青色申告で最大65万円の特別控除:所得税・住民税の負担を抑えられる
  • 赤字を翌年以降に繰り越せる:開業初期の損失を翌年以降の黒字と相殺できる
  • 屋号付きの口座を開設できる:事業用とプライベートのお金を分けて管理しやすい
  • 経費を計上しやすい:仕事に関する支出を経費にして課税所得を減らせる
  • 社会的信用につながる:契約や補助金申請などで事業の実態を示しやすい

とくに青色申告の特別控除は節税効果が大きく、要件は国税庁の「青色申告特別控除」で確認できます。ただし、最大65万円の控除を受けるには複式簿記による記帳が必要です。記帳や経費管理に不安がある方は、AI自動仕訳に対応した会計アプリ「シフォン(CFOne)」を使うと、入力の手間を大きく減らせます。

業務委託で開業届を出すデメリット・注意点

メリットの多い開業届ですが、業務委託ならではの注意点もあります。提出前に次の点を押さえておきましょう。

失業給付を受けられなくなる場合がある

開業届を出すと「事業を営んでいる」とみなされ、会社を退職した際の雇用保険の失業給付(基本手当)を受けられない場合があります。会社員をしながら業務委託を始める方や、将来的に転職・退職を考えている方は、この点を事前に確認しておくことが大切です。

配偶者の扶養から外れる場合がある

配偶者の扶養に入っている方は、開業届の有無よりも所得の金額によって扶養の判定が変わります。健康保険組合によっては、開業届を出した個人事業主を扶養の対象外とする場合もあるため、加入している健康保険の基準を事前に確認しておくと安心です。

帳簿付けや確定申告の手間が増える

事業所得として申告するには、日々の取引を帳簿に記録する必要があります。とくに65万円の控除を受ける青色申告では、複式簿記による記帳が求められます。本業や複数の取引先と両立しながらの記帳は負担になりやすいため、会計アプリなどで効率化するのがおすすめです。

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業務委託の開業届に関するよくある質問

業務委託で開業届を出さないと違法ですか?
開業届を出さないこと自体に罰則はありません。ただし所得が生じれば確定申告は必要で、無申告には加算税などが課される場合があります。
副業の業務委託でも開業届は必要ですか?
副業でも、継続的な事業といえる規模なら原則必要です。事業所得として申告することで青色申告などのメリットも受けられます。会社にバレるか心配な方は、副業の開業届の記事もあわせてご覧ください。
開業届の職業欄には何と書けばよいですか?
業務委託で行う実際の仕事内容を書きます。Webライター、システムエンジニア、デザイナーなど、事業の内容が伝わる表現でかまいません。決まった様式はありません。
開業届はいつまでに出せばよいですか?
開業日から1か月以内が原則です。期限を過ぎても受け付けてもらえる場合がありますが、青色申告には別の期限があるため早めの提出がおすすめです。

まとめ

業務委託で継続的に収入を得ているなら、開業届の提出が原則必要です。出さなくても罰則はありませんが、所得が生じれば確定申告は別途必要で、開業届を出すことで青色申告などの節税メリットを受けられます。用紙は国税庁のサイトから無料で入手でき、業務委託で記入する欄は「職業」「所得の種類」「届出の区分」など数か所に限られます。提出は窓口・郵送・e-Taxから選べ、開業日から1か月以内が目安です。源泉徴収された報酬は確定申告で精算されるため、開業後は青色申告承認申請書の提出や日々の記帳を進め、確定申告に備えておきましょう。独立して個人で働く方は、フリーランスの開業届の記事、会社員が副業で受ける場合は副業の開業届の記事もあわせて参考にしてください。

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本記事のご注意

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・会計上の判断を保証するものではありません。制度・税率・控除額・期限等は改正される場合があります。実際のお手続きや判断にあたっては、最新の情報を国税庁等の公式サイトでご確認のうえ、必要に応じて税理士や所轄の税務署にご相談ください。