自分で会社を作るには?必要な準備と判断基準

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「自分で会社を作る」と検索する方の疑問は、大きく2つに分かれます。ひとりでも会社という形を作れるのか、それとも代行を頼まず自力で手続きを進められるのか、という点です。

結論として、株式会社はひとりでも法律上設立できます。自力で進められるかどうかは、電子定款の準備や書類作成にどれだけ時間を割けるかで変わります。この記事では、両方の疑問に順番に答えます。

この記事の監修者
税理士 木村優太(CFOne会計事務所 所長税理士)

木村 優太CFOne会計事務所 所長税理士

累計300社以上の申告を手がけ、freee導入実績全国1位の会計事務所で「freee Master of the Year」を受賞した現役の税理士・会計事務所の所長が、本記事の内容を監修しています。

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「自分で会社を作る」には2つの意味がある

ここでは、「自分で会社を作る」という言葉に含まれる2つの疑問を整理します。当てはまるほうを意識しながら読み進めてください。

「自分で会社を作る」に含まれる2つの意味(ひとりで会社を作れるか・自力で手続きを進められるか)を示した図

意味1|ひとりで会社を作れるか

1つ目は、共同経営者を立てず、自分ひとりで発起人(会社設立の手続きを行う人)になり、代表者になれるかという疑問です。友人や家族と一緒に始めるのではなく、一人会社として成立するのかを知りたいケースです。

意味2|代行に頼らず自力で手続きを進められるか

2つ目は、行政書士・司法書士・設立代行サービスなどに頼まず、定款の作成から登記申請まで自分の手だけで進められるかという疑問です。共同経営者がいる場合でも、この意味では検索されます。

この記事では、意味1の法律上の答えを先に確認し、そのあとで意味2にあたる自力での進め方とつまずきどころを解説します。手続きの詳しい時系列は、会社設立の流れを解説した記事にまとめています。

会社設立の流れ 6つの手続きを解説 会社設立の流れ|株式会社の6つの手続きを解説 合同会社の設立とは|株式会社との違いと流れ アイキャッチ 合同会社の設立とは?流れと株式会社との違い

自分ひとりで会社を作れるか|法律上の答え

結論から言うと、株式会社はひとりでも設立できます。ここでは、その根拠を条文から確認します。

発起人は1人でも設立できる(会社法25条)

会社法25条は、発起人(会社設立の手続きを行う人)が設立時発行株式の全部を引き受ける方法(発起設立)で株式会社を設立できると定め、各発起人は1株以上引き受ければよいとしています。発起人の人数を複数と定めた規定はありません。

出典:法務省・e-Gov法令検索「会社法」第25条

取締役も1人で足りる(会社法326条1項)

会社法326条1項は「株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない」と定めています。取締役会を置かない会社であれば、取締役1人だけの体制で成立します。

出典:法務省・e-Gov法令検索「会社法」第326条第1項

発起人1人・取締役1人という組み合わせでも、定款に必要事項を記載すれば株式会社として成立します。「共同経営者がいないと会社は作れない」という思い込みは、条文の上では成り立ちません

ひとり会社でも社会保険の加入義務は生じる

ひとりで会社を作るときに見落とされやすいのが、社会保険です。日本年金機構は、常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用する法人事業所は、健康保険・厚生年金保険の加入が法律で義務づけられているとしています。

出典:日本年金機構「新規適用の手続き

社長1人だけの会社であっても、加入義務があることに変わりはありません。役員報酬をいくらにするかは、加入する社会保険料の額にも影響します。決め方や最低額の考え方は、一人社長の給料を解説した記事にまとめています。

一人社長の給料はいくら?役員報酬の決め方と社会保険料の目安を解説 一人社長の給料はいくら?役員報酬の決め方を解説

役員報酬の相場を解説した記事や、最低額を解説した記事もあわせて参考にしてください。

自分で会社を作るとき、何が自分の仕事になるか

ここでは、代行を頼まず自力で進める場合に、何が自分の作業になるのかを確認します。

定款の作成から登記申請まで、一つひとつ自分で動かす

行政書士・司法書士に頼らない場合、会社の基本事項の決定・定款の作成・公証人の認証・出資金の払込み・登記申請書類の作成、という一連の作業を自分で動かすことになります。工程ごとに何をすべきかの詳しい手順は、会社設立の流れを解説した記事で時系列に沿って確認できます。

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減らせるのは専門家報酬だけ、法定費用は変わらない

費用の面では誤解が起きやすいところです。定款の認証手数料や登記にかかる税金といった法定費用は、自分で手続きしても専門家に依頼しても同じ額です。差が出るのは、電子定款のための機材・ソフト代と、専門家に支払う報酬の2か所だけです。

つまり、自分でやることで浮くのは主に専門家報酬であり、法定費用そのものは減らせません

認証手数料は資本金の額等に応じて段階的に定められています(資本金100万円未満は3万円、100万円以上300万円未満は4万円、300万円以上は5万円)。

さらに2024年12月1日以降は、資本金100万円未満で、発起人が自然人のみ3人以下・設立時発行株式の全部を発起人が引き受け・取締役会を置かない場合に限り、1万5,000円に引き下げられています

出典:日本公証人連合会「Q7. 認証の手数料」「会社の定款手数料の改定

費用の内訳と金額は、会社設立の費用を解説した記事に一覧でまとめています。

会社設立の費用はいくら?内訳一覧と最安ルートを解説(税理士監修・AI会計アプリ シフォン/CFOne) 会社設立の費用はいくら?内訳一覧と最安ルートを解説

自分で会社を作るうえでつまずきやすいポイント

ここでは、自力で手続きを進める人が実際につまずきやすい3つの場面を取り上げます。

電子定款の壁|収入印紙4万円と、必要な機材

紙で定款の原本を作ると、1通につき4万円の収入印紙を貼る必要があります。国税庁のタックスアンサーは、印紙税の対象を「株式会社、合名会社、合資会社、合同会社又は相互会社の設立のときに作成される定款の原本」に限ると説明しています。

出典:国税庁「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)

課税対象になるのは、公証人が保存する原本1通だけです。国税庁の質疑応答事例は、認証後に会社へ返還される定款は非課税になると説明しています。

出典:国税庁「課税される定款の範囲

一方、電子定款(電磁的記録として作成した定款)であれば、この収入印紙は不要です。国税庁は、印紙税の課税対象は課税物件表に掲げられた文書に限られ、電磁的記録は文書に含まれないため課税されないとしています。

出典:国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」(印紙税法第2条)

電子定款を自分で作るために必要なもの(マイナンバーカード・ICカードリーダライタまたはNFC対応スマートフォン・電子署名対応ソフト)を示した図

ただし、電子定款を自分で作るには準備が要ります。署名用電子証明書が有効なマイナンバーカード、ICカードリーダライタ(またはNFC対応スマートフォン)、電子署名に対応したソフトの3つがそろって、はじめてオンラインで手続きできます

印紙代4万円との差し引きがどうなるかは、手持ちの機材やソフトの状況で変わります。すでにマイナンバーカードとICカードリーダライタを持っている方でなければ、そろえる手間そのものがつまずきどころになります。

登記申請書の作成|電子証明書がなくても書類は作れる

登記申請書は、法務省が提供する「申請用総合ソフト」で作成できます。ここで見落とされやすいのが、電子証明書を持っていなくても、申請用総合ソフトを使って登記申請書を作成すること自体はできるという点です。

出典:法務省「申請用総合ソフトとは

ただし、作成した申請書に電子署名を付けてオンラインで送信するには、電子証明書が必要です。電子証明書を用意できない場合は、書類を印刷し、法務局の窓口へ持参または郵送する方法になります。書類の記載に不備があると補正や再申請が必要になり、その分だけ登記の完了が遅れます。

法人設立ワンストップサービスを使うという選択肢

マイナポータルの法人設立ワンストップサービスを使うと、複数の窓口をまたぐ手続きを一度にまとめられます。法人設立ワンストップサービスは令和2年1月20日に提供が開始され、令和3年2月26日からは定款認証・設立登記も対象に加わり、法人設立に伴うすべての手続をまとめて行えるようになりました

出典:国税庁「法人設立ワンストップサービスの対象が全ての手続に拡大されました

法人設立ワンストップサービスで一度にできること(定款認証・法人設立登記・税務署等への届出)を示した図

利用に必要なものは、電子定款のときと同じです。デジタル庁の公式マニュアルは、マイナンバーカードに加え、PC・タブレットで申請する場合はICカードリーダライタ、またはマイナポータルアプリを入れたスマートフォンが必要としています。

出典:法人設立ワンストップサービス「申請に必要なものを確認する

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自分で会社を作るべき人・専門家に頼んだほうがいい人

ここまでの内容を踏まえて、判断の目安を整理します。どちらが正解と決まっているわけではありません。

自分でやるのに向いている人
  • 手続きに使える時間がある
  • マイナンバーカード・ICカードリーダライタなど電子定款の環境がすでに整っている
  • 書類の細かい確認や法務局とのやり取りを負担に感じない
専門家に頼んだほうがよい人
  • 設立を急いでいて、補正や再申請による遅れを避けたい
  • 電子定款の機材・ソフトをそろえる余裕がない
  • 設立後の税務の届出・記帳・申告まで見据えて任せたい

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自分で会社を作ることに関するよくある質問

株式会社はひとりでも設立できますか?
できます。会社法25条は発起人1人でも設立できると定め、326条1項は取締役1人で足りるとしています。発起人1人・取締役1人の組み合わせでも成立します。
自分で会社を作ると、費用はどれくらい安くなりますか?
定款の認証手数料や登記にかかる税金といった法定費用は、自分でも専門家依頼でも同額です。安くなるのは主に専門家報酬の部分にとどまります。
電子定款を自分で作るには何が必要ですか?
署名用電子証明書が有効なマイナンバーカード、ICカードリーダライタ(またはNFC対応スマートフォン)、電子署名に対応したソフトの3つが必要です。
一人で会社を作る場合、社会保険には入らなくてよいですか?
入る必要があります。常時従業員を使用する法人事業所は健康保険・厚生年金保険の加入が義務づけられており、事業主のみの場合も対象です。
合同会社と株式会社、自分で作るならどちらが簡単ですか?
合同会社は定款の認証が不要な分、手続きはシンプルです。両者の違いや選び方は、合同会社の設立を解説した記事で比較しています。

まとめ

「自分で会社を作る」には2つの意味があります。ひとりで設立できるかという問いには、会社法上「できる」というのが答えです。発起人1人・取締役1人でも株式会社は成立します。

代行を頼まず自力で進められるかという問いは、時間と環境しだいです。法定費用は自分でやっても変わらず、つまずきやすいのは電子定款や登記申請書の作成といった実務面です。手続きに使える時間があり、電子定款の環境が整っている人には自力での設立が向き、設立を急ぐ人や設立後の経理まで任せたい人には専門家への依頼が向いています。

個別の手続きや判断に迷う部分は、法務局や所轄の税務署、税理士にご確認ください。

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本記事のご注意

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・会計上の判断を保証するものではありません。制度・税率・控除額・期限等は改正される場合があります。実際のお手続きや判断にあたっては、最新の情報を国税庁等の公式サイトでご確認のうえ、必要に応じて税理士や所轄の税務署にご相談ください。